2016年5月22日日曜日

Ruisleipä.

以前の記事でフィンランドの食文化の貧しさについて書いたことがありますが、日本に長くいるとフィンランド料理の一つだけは必ず恋しくなります。それは、ruisleipä「ライ麦パン」です。ライ麦パンというと、日本のスーパーでも売っているような柔らかい「ライ麦入り」のパンではなく、100%のライ麦である黒いパンなのです。ライ麦パンはもちろん一つの決まったパンではなく、作り方によって硬くて苦いものもあれば、柔らかくて甘めのライ麦パンもあります。とにかく、味がしっかりあって、日本のもの足りないふわふわパンとは違う、満足感のあるパンです。

日本で売っているパンは、私にとってパンとは思えないので、たまに本格的なライ麦パンが食べたくなります。フィンランドに滞在経験のある日本人の中でも、たまに食べたくなる人はいるかと思いますが、果たして日本では手に入るでしょうか。

少し足を運ぶことになるかもしれませんが、ライ麦パンを売っている場所はいくつかあります。一つはもちろん「ムーミンカフェ」です。東京では二箇所:スカイスリーの下、水道橋の東京ドームシティーにあって、福岡にも一箇所にあるようです。私が先日行ったのは水道橋駅の近くの東京ドームシティーのムーミンカフェでした。大きなジェットコースターの下にありますので、わかりやすいと思います。カフェには行きませんでしたが、ベーカリーの方からライ麦パンを買いました。黒パンのハーフで300円でしたので、フィンランドの同じパンの値段を考えれば、そんなに高く感じませんでした。

甘めの黒パン
カマンベールチーズをのせて、1分だけチンして美味しい!
 味ですが、成功!フィンランドではsaaristolaisleipä「島風パン」と呼ばれている少し甘めのライ麦パンにそっくりです。向こうでは祖父のオススメでよくブルーチーズをのせていますが、今回はカマンベールをのせてみて、美味しかったです!もちろんバターだけでも美味しいと思います。フィンランドのカフェではサーモンをのせるのもよく見かけます。

8年前、東京の池袋の東武百貨店か西武百貨店のどちらかのデパ地下のパン屋さんでも美味しいライ麦パンを買った覚えがありますが、まだ存在するかわかりません。

もう一つ確実にライ麦パンを売っている場所を言うと、京都にある「Kiitos Leipomo」ですね。2013年〜2014年に京都に住んでいた時に一度だけライ麦パンを買ってきましたが、ここも本物でした。場所は少しわかりにくかったですが、ライ麦パンの種類が多くて、フィンランドの伝統的なカレリアパイ(薄いライ麦皮の中に米)も売っていました。

しっかりしたルイスレイパ、酸っぱいハパンレイパ、柔らかいカレリアパイ
他にもライ麦パンを売っている場所はあるだろうと思いますが、ちゃんとしたものは意外と見つからないです。例えば、大阪に何店舗もある「HOKUOカフェ」を始めて見た時期待が高かったですが、実際に入ってみたら、日本のどのベーカリーにもありそうな、菓子パン、食パンなどのような商品しかなかったです・・がっかり。

チェーン店より小さな、個人がやっているようなベーカリーでライ麦パンを作っているのはたまに聞きます。東京にはいくつかあるような気がしますし、神戸にもあると聞いたことがありますが、詳しい情報は知りません。

とにかく、ライ麦パンを日本でも食べたい方は、少し手数がかかるものの不可能ではないのは嬉しいことですね。ただ、ほとんどのお店が出してるような「ライ麦パン」に騙されないでください。黒くて麦のほぼ100%がライ麦でなければ、ライ麦パンではないです!

フィンランド語ではライ麦は「ruis」で、ライ麦パンが「ruisleipä」です。

2016年4月30日土曜日

戻りました。

しばらくブログを書いていないですね。
実は、フルタイムで仕事をしたり、修士論文を書いたりしましたから、なかなか時間はなかったです。今月はようやく修士論文を出しましたので、ブログを書く元気が戻りました。

冬から夏にかけて東京で働くことになっています。仕事が非常に楽しいですが、東京はやはり疲れます。人もお店も車も選択肢も多すぎます。日本は、地方がいいです。(GWはもちろん地方で過ごしてます。)

フィンランドは最近いろいろ起きています。去年の春に選ばれた政府が一生懸命福祉社会を破壊しようとしているようです。大学の基本研究の予算や福祉予算を減らしたり、国営企業の民間化を図ったりしています。今の政治に全く賛成できません・・・

政治家はともかく、国民によってもちろんいいことも起きています。例えば、一つ話題になっているのは、来月フィンランド全国のスーパーで発売される「プルドオート」です。フィンランド人の女性研究者が開発した豆とオート麦で作られるタンパク質の高い食べ物なのですが、環境に悪い肉消費の増加に歯止めをかけることが期待されています。名前は、最近アメリカやフィンランドなどで流行っている「プルドポーク」の食感に似ていることが由来だそうです。「プルドオート」は世界的に広げる予定だそうですが、日本でも販売されるのを楽しみにしてください。(実は私もまだ食べていませんが、帰国したら試食する予定です。)

さて、今日のフィンランド語は「kaura」、オート麦です。


2015年6月2日火曜日

Hyvinvointivaltioの終わり?

先月日本に来ました。もうフィンランドの真夏を超えてる暑さですね。

今は日本で主に修士論文を書いていますが、この間ちょっと台湾も訪れました。

日本で見かけるフィンランドは、例えばマリメッコのお店、イッタラの食器、ムーミングッズ、適当なフィンランド語の名前が付けられたお店(ehkä söpö, Kiitos...)などがありますが、台湾ではあまりフィンランドが知られているイメージはありませんでした。去年の冬も台湾に行ってはいますが、特にフィンランドに関係のありそうなものは見かけなかったです。しかし、今回はたった四日間でびっくりするほど「フィンランド」を見かけました!

マリメッコは台北にお店を出してるようです!日本と違ってマリメッコの鞄はまだそんなに町中に見かけなかったですが。

夜中のマリメッコ(台北市大安区)
 そして、松山文創園區の誠品生活松菸店(eslite)ではアルバー・アールトのartek商品が置かれていてびっくりしました!

artekがお店の一部に置いてある
この建物に入ってみたら、なんとフィンランド語の名前の付いた洋服ブランドのコーナーがありました!お店の名前kotipesä」の意味は中国語のチラシにも書かれたようでしたが、koti「家」とpesä「巣」をくっついて、愛を込めた自分の家(または動物の巣など)の呼び方です。洋服は別にフィンランドに関係はないようですが、雰囲気からすると名前には違和感がないですね。

kotipesä

そして最後に、「Onni」という名前の洋服屋さんです。フィンランド語では「幸福」または「運」という意味ですが、この当時(夜中)閉まっていたお店は果たしてフィンランドに関係あるんでしょうかね・・・

Onni, 台北市大安区

「台湾においてのフィンランド」でした。

そしてもう少し真剣な話題へ。この間フィンランドで国会選挙がありましたが、結果はとても残念でした。与党になった3党は、価値観の面で保守的で、福祉社会を捨ててお金持ちしか幸せに生きていけない社会を作ろうとする人たちです。これから、教育予算を減らしたり(公約でそうしないと言ったのに)、医療予算を減らしたり、労働環境を改悪したりする予定だそうです。フィンランドの将来は怖いです。これからの4年間、野党に与党の計画できるだけ止めてほしいですが、どうなるんでしょうかね・・・

では、今日のフィンランド語は「hyvinvointivaltio」(ヒュヴィンヴォインティヴァルティオ)-「福祉国家」です。3つの単語で作られています― hyvin(良く、元気に)vointi(調子、状態)valtio(国家)、つまり「調子のいい国」ですね。

ちなみに、「Voi hyvin!」 と言ったら「元気でね!」という意味になります。


2015年4月17日金曜日

Sun kainaloosi käperryn ja jos sallit yöksi jään.

久しぶりです。2ヶ月間も経ってしまったようですね。

冬は長く感じました。春になったかと思ったらまた雪が降ったりしていて絶望するところでしたが、今はようやく春になったと言える・・・かな。

3月25日に教室を出たら・・
春の兆しネコヤナギの花穂

北西ヘルシンキの人工山「Malminkartanonhuippu」から見たヘルシンキ

今回はフィンランド語のある表現について少し書きたいと思います。「脇の下に来て!」と言われたらどう思いますか?変態話ではなくて、フィンランド語では「Tule kainaloon!」(tulla 「トゥッラ」= 来る、kainalo「カイナロ」 =  「脇の下」)と言われたら、抱きたいわけです。日本語で「腕の中においで」と翻訳したら意味がたぶん似ていると思います。同じく「olla kainalossa」(脇の下にいる)と言ったら「腕の中にいる/抱かれる」という意味になるでしょう。ところが、この間、日本の方に「脇の下」に入るなんて、変態みたいじゃないですかと言われて、初めてこのフィンランド語の独特な表現について考えてみました。確かに英語でも「Come to my armpit!」と言ったらおかしいものです。しかし、フィンランド語的に「脇の下」とはやはり最も安心できるところなのではないかと思います。「脇の下」に入って映画を見るとか、「脇の下」で眠るとか・・ちなみに、実際に頭を脇の下に入れるわけではなくて、「抱く」みたいなものです。でも、この表現のお陰で「kainalo」という単語にはたぶん「脇の下」ほど熱くて汗臭いところのイメージがないと思います。言語によって身体の部分にも様々な意味がありますね。

今日のヘルシンキ
タイトルはこの曲の歌詞の一部です。
直訳は「あなたの脇の下にうずくまって、あなたがそれで良かったらここで一晩過ごす」
(Juice Leskinen: Viidestoista yö)


2015年2月6日金曜日

Helsingin yliopisto.

今年、ヘルシンキ大学は375周年に迎えます。フィンランドの最古の大学で、3万人の学生と4000人の研究者が居り、国内最大の大学でもあります。ちなみに、世界大学学術ランキングでは73位で、国際的に見ても良質の研究が行われているようですね。(こういうランキングは基本的に批判的ですが・・)

ヘルシンキ大学はフィンランドの全ての大学と同じく、国立で学費も何も学生の負担には一切なりません。フィンランドの大学制度については、前も書いています。留学生も学費は取られませんけれども、もちろんほとんどの授業はフィンランド語なので、フィンランド語ができないと取れるコースがかなり限られてしまいます。一応英語のプログラムもいくつかあるようですので、留学生も少なくはありません。

ところが、この数週間新聞では、「フィンランドの大学生は皆バイトしてばかりいる、なかなか卒業しない、無料の教育の返しに早く社会人になって税金を払ってくれない怠けもの!」という投稿がいくつかありました。(バイトも税金は払うんですけど。)

それをきっかけにして、先週面白い記事が新聞に載せていました。ヘルシンキ大学は元首都のトゥルク(名前も「トゥルクアカデミー」でした)に開校された1640年、フィンランドはまだスウェーデン王国に支配されていましたけれども、実は、ヘルシンキ大学を創立した人は、当時13歳であったスウェーデンの王女様だったそうです。「十代の女の子に創立された大学で学びたいと思いませんか?」がいい広告になるかもしれません。
しかし、それだけではなくて、どうも昔の大学生もかなりとんでもなかったようです。まず、卒業率が低くて、多くの学生は途中で就職して退学していました。そしてまだ創立して数年も経っていないうち、一年生のパーティーがあまりにもワイルドで禁止されざるを得なかったようです。1800年になって、首都も大学の位置もヘルシンキになっていた頃、学生達が他の人より規則が厳しかったです。禁止されたのは、例えば午後10時以降出かけること、タバコは吸うこと、学長にお知らせせずにヘルシンキ市を出ること(!)などでした。規則を守らなかった学生は、大学の本館の地下牢に入られました。ちなみに、その地下牢は現在、女子トイレになっています。

たぶん、今の学生生活は昔に比べて楽だろうと思いますけれども、卒業したくない理由はそれだけではなくて、かえって社会人としての世界があまりにも厳しくなってしまったということもあるのではないかと思います。

ゼミ室から撮ったヘルシンキ大学のメインキャンパスと大聖堂

今日のフィンランド語の単語は・・
「ahkera opiskelija 」(アフケラ・オピスケリヤ)ー 勤勉な学生。
私のことではないです。

2015年1月22日木曜日

Keskitalvi.

お久しぶりです。
冬休みは日本で過ごしてきました。ほとんど限りなく面白い鳥取にいましたけども、東京、山形、京都なども訪れました。

フィンランドにもあっちこっちでぶつかりました。

東京の品川駅内に12月にあった「北欧雑貨フェア」。
下の棚にフィンランドのハンドソープbliwも。

チェーン店の雑貨屋さんの「キートス」(=フィンランド語で「ありがとう」)で
なぜかスウェーデンの国旗・・??

新宿で伊勢丹の広告はフィンランドの先住民のサーミ人が
テーマになってるようでした。
伊勢丹のウィンドーの巨大なサーミ人!

東京の「spiral」でiittala(イッタラ)も売っていました。
12月にフィンランド人のアーティストの作品も展示に置かれていました。

日本ではフィンランド(と北欧)ブームはまだまだ続いているようですね。もうすでにフィンランドに行ったことがある方、いつか行ってみたいと言ってくれる方に会って、とても嬉しい気分でした。まあ、たまにフィンランドがちょっと理想化されている気もしますけども・・

フィンランドに関係のない写真もどうぞ。

鳥取駅

鳥取砂丘

新宿のクリスマスイルミネーション
山形の上山温泉街
帰国して、また大学と仕事で忙しくなりました。今のところ、雪が多くて、−15度の非常に寒い日もあれば0度くらいの中途半端な日もあります。毎朝、何を着ればいいのか悩みます。大学以外にあまり出かける暇がないですけどね。

今回のフィンランド語の単語は「pakkanen」(パッカネン)です!意味は「零下」、「氷点下」に近いです。
Pureva pakkanen! = 「噛む氷点下の温度!」(零下で、肌が噛まれているかのように痛いほど寒い時に使う)

2014年12月2日火曜日

Joulu tulee!

ようやく12月になりました。今日の新聞によると、今年の11月は21世紀に入ってから一番暗かったという。ヘルシンキで11月は太陽が13時間しか出ていなかったそうです。6月だったら、太陽は一日で13時間出てても不思議じゃないのに・・

ある11月の日、午後3時40分
ある11月の日、午前9時50分
極端な暗さには良い所もありますが。例えば、クリスマスイルミネーションを楽しめる時間はかなり長いです。今のところ他に良い所を思いつかないですが。

ヘルシンキの代表的なAleksanterinkatuのクリスマスイルミネーション
 クリスマスイルミネーションやクリスマス飾りはもうとっくに飾られていますが、12月に入ったら、本格的にクリスマス時期に入ったと言えます。フィンランド語で12月は「joulukuu」ー「クリスマス月」と呼びますもの。この頃、中心に出かけると、お店はクリスマスプレゼントを探している人で非常に混んでいます。クリスマスまでの日数を数えるためのアドベントカレンダー「joulukalenteri」は様々あります。紙に小さい扉があって、毎日中にどのような絵が描かれているかを楽しみにしながら開けるものが一般的ですが、例えば、扉を開けてチョコを貰ったり、テレビのミニクリスマスドラマを観たり、色々な種類の運動をしたりするなど、クリスマスまでの日数を数えるスタイルはたくさんあります。

クリスマスにはあまり興味はないですが、12月になると、「11月乗り越えた!やったぞ!」みたいな気持ちにはなります。去年は日本に留学していましたし、今年も旅行で日本に行ってしまいますから、フィンランドのクリスマスについてはこれ以上書かないと思います。

川が凍っている

もう少し授業を頑張れば冬休みに入ります。フィンランドでは冬休みではなくて、クリスマス休み「joululoma」と呼びますが。

今日のフィンランド語の単語はもちろん「joulu」です!意味はなんでしょうか?